新しいい草には、ダニを寄せ付けにくい力がある? 2026年の研究から分かったこと

「畳はダニがわきやすい」
そんな話を聞いたことはありませんか?
確かに、畳はダニが生息する場所の一つです。しかし、だからといって、すべての畳が同じようにダニの侵入や繁殖を許すわけではありません。
実は2026年に発表された研究で、天然い草の畳表には、ダニの侵入を防ぐ働きがあることが報告されています。
今回は、その研究結果を紹介するとともに、畳表の経年変化や、畳を長く快適に使うためのお手入れについて考えてみたいと思います。
1.2026年、い草とダニの関係を調べた研究
今回ご紹介するのは、2026年に学術誌『室内環境』に掲載された研究です。
論文のタイトルは、
「い草のダニ防除効果と2-ブチルオクタン酸を用いた畳用防ダニ不織布の開発」
研究では、天然い草の畳表が、ダニの侵入をどの程度防ぐのかを調べています。
実験に使用されたのは「ヤケヒョウヒダニ」という種類のダニです。
ヤケヒョウヒダニは、室内に生息するダニの一種で、アレルギーとの関係でも知られています。
ここで重要なのは、今回の研究が「畳の中でダニがどれくらい繁殖するか」を直接調べたものではないという点です。
調べたのは、ダニが畳表を通り抜けて侵入するのを、どの程度防げるかということです。
この違いを理解しておくことが、研究結果を正しく読み取る第一歩になります。
2.新しいい草の畳表で、高い侵入阻止率を確認

研究では、新しいい草の畳表を使った実験で、興味深い結果が報告されています。
代表的な品種の結果は次のとおりです。
| い草の品種 | ダニの侵入阻止率 |
|---|---|
| ひのみどり | 98.3% |
| ひのはるか | 96.3% |
| 夕凪 | 93.9% |
いずれも、実験条件下で90%を超える高い侵入阻止率が確認されています。
例えば「ひのみどり」の98.3%という数字は、実験でダニの侵入を防いだ割合を示しています。
ただし、次のような意味ではありません。
- 畳にダニが発生しなくなる
- 家庭内のダニが98.3%減少する
- ダニの繁殖が98.3%抑えられる
これらは、侵入阻止率とは別の問題です。
研究で高い数値が示されたことは興味深いものですが、その数字をそのまま実際の住宅に当てはめることはできません。
3.い草の品種によっても違いがある
い草には、さまざまな品種があります。
畳表として使用されるい草も、すべて同じ品種というわけではありません。
今回の研究では、品種や試料によって、ダニの侵入を防ぐ割合に違いが見られました。
これは、天然い草の性質が必ずしも一様ではないことを示す興味深い結果です。
ただし、品種による侵入阻止率の違いが、どのような要因によって生じているのかについては、慎重に考える必要があります。
また、研究で確認された侵入阻止率だけをもって、畳表の総合的な品質や優劣を判断することもできません。
畳表には、肌触り、耐久性、見た目、価格など、さまざまな選択基準があります。
今回の研究結果は、畳表の特徴を理解するための新しい情報の一つと考えるのが適切でしょう。
4.畳表は、長く使ううちに何が変わる?
新しい畳の青々とした色は、時間がたつにつれて少しずつ黄金色へと変化していきます。
しかし、畳表の経年変化は色だけではありません。
長く使用することで、次のような変化が起こる場合があります。
① い草の色の変化
新しい畳表の緑色は、時間の経過や日光の影響などによって変化します。
② い草に含まれる成分の変化
い草にはさまざまな成分が含まれており、時間や使用環境によって、その状態が変化する可能性があります。
③ 表面の摩耗
歩行や家具との接触などによって、畳表の表面が擦れたり、傷んだりすることがあります。
④ 織り目や隙間の変化
使用状態によっては、畳表の織り目が緩んだり、い草が傷んで隙間が生じたりする場合もあります。
こうした変化は、畳表の状態を考えるうえで大切な要素です。
では、これらの変化はダニの侵入にどのような影響を与えるのでしょうか?
5.日光に当てた畳表では、侵入を防ぐ働きが低下
今回の研究では、畳表を一定期間、日光のよく当たる場所に置いて、その変化も調べています。
その結果、試験後の畳表では、ダニの侵入を防ぐ働きが低下することが報告されました。
研究者らは、い草に含まれる揮発性成分、つまり空気中に広がりやすい成分の変化が関係している可能性を指摘しています。
ただし、ここで注意したい点があります。
研究で確認されたのは、一定期間日光に当てた畳表の変化です。
何年も使い込んだ畳について、摩耗や織り目の緩みまで含めて調べた結果ではありません。
そのため、
「古い畳ほど必ずダニが増える」
「畳の色が黄色くなったから、ダニが侵入しやすくなった」
と断定することはできません。
色の変化は、畳表に起こる変化の一つです。
ダニとの関係を考える際には、色だけでなく、い草に含まれる成分や畳表の状態など、複数の要素に目を向ける必要があります。
6.研究で分かったこと、まだ分からないこと
今回の研究から分かったのは、新しいい草の畳表には、実験条件下でダニの侵入を防ぐ働きが確認されたということです。
また、その働きには品種や試料による違いがあり、日光に当てた後には変化することも示されました。
一方、今回の研究だけでは判断できないこともあります。
例えば、
- 実際の住宅で、ダニの生息数がどの程度変わるのか
- 長年使用した畳の摩耗や織り目の緩みが、ダニの侵入にどの程度影響するのか
- 畳床の材質や構造によって、どのような違いが生じるのか
- 湿度や掃除の頻度など、生活環境によって効果がどの程度変わるのか
といった点です。
研究結果を紹介するときには、分かったことだけでなく、まだ分かっていないことも大切にしたいと思います。
7.畳を長く快適に使うためのお手入れ
天然い草にダニの侵入を防ぐ働きがあるとしても、日頃のお手入れが不要になるわけではありません。
畳を快適に使い続けるために、次のようなことを心がけましょう。
こまめに掃除をする
畳の目に沿って、ゆっくり掃除機をかけましょう。
ホコリや食べかすなどを取り除き、ダニの餌となるものをためないことが大切です。
室内の湿気をためない
ダニは湿気の多い環境で増えやすくなります。
天候や外気の湿度に応じて換気や除湿を行い、室内の湿度を適切に管理しましょう。
布団を敷きっぱなしにしない
畳の上に布団を敷いたままにすると、湿気がこもる場合があります。
布団を上げ、寝具を適切に乾燥・清掃することも大切です。
飲み物などをこぼしたら早めに対処する
水分が畳に染み込むと、シミや傷みの原因になります。
こぼしたときは、すぐに乾いた布などで水分を吸い取り、十分に乾燥させましょう。
畳表や畳床の状態を確認する
畳表が擦り切れてきたり、畳が沈むようになったりした場合は、表面だけでなく畳床の状態も確認することが大切です。
表替えで対応できるのか、新調が必要なのかは、現在の畳の状態によって異なります。
8.天然い草の魅力を、研究から見直してみる
天然い草の畳には、独特の香りや肌触りなど、昔から親しまれてきた魅力があります。
今回ご紹介した研究は、そこに「ダニの侵入を防ぐ働き」という新たな視点を加えるものです。
ただし、研究で確認された効果と、実際の住宅で得られる効果は同じとは限りません。
天然い草だから絶対に安心というわけでも、古い畳だから必ず問題があるというわけでもありません。
大切なのは、素材の特徴を正しく知り、住まいの環境や使い方に合わせて畳を選び、適切にお手入れすることです。
まとめ|い草には、まだ知られていない可能性がある
2026年の研究では、新しいい草の畳表に、ダニの侵入を防ぐ働きがあることが報告されました。
また、品種や試料による違い、日光に当てた後の変化も確認されています。
一方で、実際の住宅におけるダニの生息数や、長年の使用による摩耗・織り目の変化との関係については、まだ分からないことがあります。
これからの研究によって、天然い草の性質がさらに明らかになることを期待したいですね。
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参考文献
「い草のダニ防除効果と2-ブチルオクタン酸を用いた畳用防ダニ不織布の開発」
『室内環境』2026年、29巻1号、9–18頁
原著論文:
https://www.jstage.jst.go.jp/article/siej/29/1/29_9/_article/-char/ja
※本記事は研究資料をもとにした一般的な情報提供を目的としています。特定の畳表による防ダニ効果や、アレルギー症状の改善を保証するものではありません。
